小中学生向けの月刊ニュースマガジン『ジュニアエラ』で連載中の「プリンス堀潤のそもそもキーワード」。今回は「ブラックバイト」について一緒に考えます。

*  *  *

 みなさんは「ブラック企業」という言葉を聞いたことがありますか? これはあまりよい言葉ではありません。これから社会に出て働くみなさんの命や健康にも関わるテーマなので、覚えておきましょう。

 ブラック企業とは、法律に違反して長時間従業員を働かせる、賃金を不当に支払わない、暴力的な言動や行動、性的な嫌がらせをするなど、いわゆるパワーハラスメントやセクシュアルハラスメントが横行している会社をいいます。業績をよくすることに必死で、働く人を大切にしないのです。そうした環境で働かされる人のなかには、健康を害して突然死んでしまったり、心を病んで自殺したりしてしまうケースもめずらしくありません。ぼくが以前働いていたテレビ放送局でも、長時間労働が原因で、31歳という若さで女性記者が突然亡くなりました。

 こうしたケースを過労死と呼びます。死ぬまで働かされる異常な日本の労働環境が海外でも話題になり、「karoshi」として日本語のまま通じるようになりました。

 ここ数年で「ブラック企業」だけでなく、「ブラックバイト」という言葉にも注目が集まるようになりました。

 アルバイトとは、雇い主と約束した日に時間分働き、それに応じた賃金(時給)をもらって稼ぐ働き方です。大学生協のデータでは、今、大学生の7割がアルバイトをしており、その割合は年々増えてきています。働く親世代の収入が伸び悩むなか、大学の学費は年々上昇。学費や生活費の足しにするため、アルバイトをする学生の数が急速に増えているのです。

 一方、会社側も正社員を雇うより、アルバイトを雇ったほうがコストがかからないため、景気の低迷などを背景に、アルバイトやパートの枠を拡大させてきました。そうした現場で違法な「ブラック化」が進んでいるというのです。

 厚生労働省の労働条件についてのアンケート(※)によると、1千人のアルバイトをした学生のうち約60%が「何らかのトラブルがあった」と回答。賃金の不払いや、労働時間が6時間を超えても休憩時間がなかったなど、法律違反の恐れがあるものも含まれていました。

著者 開く閉じる
AERA編集部
AERA編集部

1 2