60年代後半、制服そのものに対して、「おかしい」と思う高校生が出てきた。制服着用は支配、管理の象徴であると批判し、自由を求めて制服の廃止を訴えたのである。その結果、一部の地域、高校で制服が廃止されるようになった。70年代以降、北海道、宮城、東京、長野の多くの公立高校で制服はなくなり、今でもこれらの地域では私服通学の学校がみられる。

 80年代、おしゃれな制服が注目されるようになる。制服がかわいいからという理由で学校を選ぶ子どもも出てきた。それを学校が聞きつけて、かわいい、かっこいい制服をとりいれるところも出てきた。男子は黒の詰め襟がブレザーに、女子はセーラー服からおしゃれなデザインのブレザーに変わっていく。ずっとのちにデビューするAKB48のステージ衣装のような。

 制服必要論も出てきた。「私服通学では家の経済状態がわかってしまう。毎日、同じ服しか着られない人はかわいそう」という考え方のもと、「自由」よりも「気遣い」が優先されることもあった。

 管理と統率、自由へのあこがれ、おしゃれ、高級ブランド、格差への気遣い、性的少数者への配慮。制服はいつだって時代のありようを教えてくれる。そう考えるとなかなかおもしろく、勉強になる。(解説/教育ジャーナリスト・小林哲夫)

【キーワード:性的少数者(LGBT)】
レズビアン(女性の同性愛者)、ゲイ(男性の同性愛者)、バイセクシュアル(両性愛者)、トランスジェンダー(性同一性障害、心と体の性が一致しない人)など、性についての少数派。英語の四つの頭文字をつなげてLGBTともいう。国や人種に関係なく、人口の5%程度とされる

※月刊ジュニアエラ 2018年5月号より

ジュニアエラ 2018年 05 月号 [雑誌]

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小林哲夫
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