世界的に長期政権が増えている。一人の指導者が長期にわたって政権を握ることで、どんな問題が起こるのだろうか? 毎月話題になったニュースを子ども向けにやさしく解説してくれている、小中学生向けの月刊ニュースマガジン『ジュニアエラ』に掲載された、朝日新聞GLOBE編集部・浅倉拓也さんの解説を紹介しよう。

【中国】習近平国家主席(6年目)/国家主席の任期2期10年まで→廃止  長期政権が可能に (c)朝日新聞社
【中国】習近平国家主席(6年目)/国家主席の任期2期10年まで→廃止 長期政権が可能に (c)朝日新聞社
【日本】安倍晋三首相(7年目)/自民党の総裁任期2期6年まで→3期9年まで (c)朝日新聞社
【日本】安倍晋三首相(7年目)/自民党の総裁任期2期6年まで→3期9年まで (c)朝日新聞社

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 3月、中国で憲法が改正され、国を代表する国家主席の任期を「2期10年まで」としていた決まりがなくなった。これにより、同月、2期目を迎えたばかりの習近平国家主席が、今後も長期にわたって政権を握ることが可能になった。

 中国はすでに世界第2位の経済大国だが、習氏は「建国100周年にあたる2049年ごろまでには世界最高水準の国力を持った国を築く」という目標を立てている。そのためには、強いリーダーが必要という考えがあるようだ。

 ロシアでも3月の大統領選挙でプーチン氏が4度目の当選を果たした。00年に初めて大統領になったプーチン氏が、首相時代を含め通算24年間、国を治めることになるのは確実だ。

 ロシアは14年に隣国ウクライナのクリミア半島を併合(自国の領土にする)した。このことで、アメリカやヨーロッパ連合(EU)と対立したが、国内ではプーチン氏の人気が高まった。愛国心や、外国に対し強い姿勢を示すリーダーを、多くの国民が支持している。

 日本では16年、自民党が総裁の任期を、連続2期6年から連続3期9年に延長した。安倍晋三首相が今年9月に再び総裁に選ばれたら、21年まで首相を続けることが可能になる(※注)。

「権力は腐敗する。絶対的な権力は絶対的に腐敗する」というのは、19世紀のイギリスの歴史家アクトンの有名な言葉だ。

 中国では1954年に初代国家主席となった毛沢東氏が、20年以上、強大な権力をふるい続けた結果、考えの異なる多くの政治家や知識人を死に追いやり、大混乱に陥った。

 長期政権では、権力者を批判することをまわりが恐れ、権力者が国を思いのままに動かす「独裁」になりやすい。新聞など報道機関まで政権の機嫌をとるようになれば、政治が間違った方向に進んでいても、ストップをかけられなくなってしまう。アフリカなどには、今もこうした国が多い。

 だからこそ、一人の指導者が権力をすべて握ったり、長く持ち続けたりできないしくみが、各国にあるのだ。世界に影響力を持つ国で、そうしたしくみが崩れることには不安がつきまとう。(解説/朝日新聞GLOBE編集部・浅倉拓也)

(※注)日本の首相の任期=直接定める規定はないが、国会の与党の代表が首相になるため、党代表の任期が首相の在任期間を縛ってきた。また、衆議院議員(任期4年)の選挙後、初めて開かれる国会で内閣はいったん総辞職するので、首相の1回の任期は最長4年になる。

【アフリカの長期政権】
 昨年11月、長期独裁の象徴だったジンバブエのムガベ大統領が93歳で辞任した。37年も権力を握り続け、ついに軍の反乱を招いた。かつてヨーロッパ諸国に支配されたアフリカ大陸は、民族や言語を無視して国境線が引かれたため、争いの絶えない国が多く、リーダーが強引に国民を束ねる傾向にある。

※月刊ジュニアエラ 2018年5月号より

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浅倉拓也
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