始まったのは5年前だ。30代の職員が少ないことで、20代の職員に仕事を教える機会が減ると予想された。それを未然に防ぐことを目的に作り上げた。若い職員の離職防止につながり、20代半ばで大きな額の融資案件を成立させる職員が増えたという。

 JXTGエネルギーは総労働時間の削減をめざし、社員の意識改革と管理職のマネジメント改革に力を入れる。2014年からは「さよなら残業~Action8~」運動として取り組む。マネジメント改革には、次の四つの運動がある。「時間外労働命令フローの徹底」「いつまでどこまで」「管理職は率先して休む」「自分のことは自分でやる」

「時間外労働命令フローの徹底」では、所属長が残業を命じない場合、一般職(非管理職)は必ず定時で退社。「いつまでどこまで」では、所属長が部下に業務命令をする場合、あいまいな内容を避けるものだ。特に「目的・期限(いつまでに)・品質(どこまで、どの程度するべきか)」は必ず明確にする。部下は他の業務により、命令にすぐに対応できないときは事情を伝え、判断を仰ぐ。

「管理職は率先して休む」では、管理職は年度末に未取得の年次有給休暇が5日を超えた場合、理由を担当役員に報告する。いっそうの取得を促進するためだ。「自分のことは自分でやる」では、所属長は原則として業務上の資料や原稿を自分で作成し、部下に命じないこととした。

 3社の事例は、上司と部下の間などに人事部が何らかの形で入ることで、現場の声をすくいあげる試みとも言える。職場環境に対する意見や批判もあれば、経営に向けられた提言や苦言もあるのかもしれない。それでも耳を傾ける寛容さや誠実さがある。聞きたくない声も聞く──。職場の民主主義の原点が、ここにある。(ジャーナリスト・吉田典史)

AERA 2018年4月30日-5月7日合併号