最後にはビッグサプライズが待っていた。会場が暗転から徐々に明るくなると、羽生のシルエットが氷上に浮かび上がった。リハビリ中のため、この日は演技はなしとアナウンスされていたが、まさかの登場に、会場は悲鳴のような歓声で溢れた。

「初めまして。『スケーターの』羽生結弦と申します。オリンピックの後から、3週間滑っていません。ずっと安静にしていました。その結果、オリンピックの前よりも状態はよくなり、スピンやステップを滑ることに全く問題はありません。ジャンプはできませんが、どうぞ楽しんで見てやってください」

 そう挨拶すると、「ロシアより愛を込めて」「ツィゴイネルワイゼン」「バラード第一番」のステップ部分をメドレーで披露した。キレのあるステップや高速スピン。まさにリンクに“降臨”した姿に、ファンの歓声はこれ以上ないものに。

「皆さんの前に立てて本当によかった。スケーターになれて、本当によかった。人生に何一つとして無駄なことはなくて、すべての出来事が人生に影響しているんだなと思います。それがこのショーで表現したかったこと。僕たちはまだまだ続きます」

 まだまだ続く──。その言葉通り、ショーの後の会見で、

「なるべくたくさんの試合に出て、自分の滑りを見てもらいたい」

 と、羽生は戦う意欲をはっきりみせた。彼が新たな「羽」を広げる日も近い。(文中敬称略)

(ライター・まつざきみわこ)

AERA 2018年4月30日-5月7日合併号