この関係者によると、安倍首相自ら「乾坤一擲」と期待値の高い肝心の拉致問題解決を含めた水面下の日朝交渉では、「さまざまなルートを通じても、依然いい回答は返ってきていない状況」という。

「つまり、改憲できない=内閣総辞職に追い込まれる」と解説する自民党重鎮によれば、「ポスト安倍」の党の幹部人事について、「改憲を主導してきた高村正彦副総裁を二階俊博幹事長へ交代。後任幹事長に菅義偉官房長官を充てる。官房長官には総裁選のカギを握る竹下派の加藤勝信厚生労働相を充てて恩義を売り、麻生氏は相次ぐ財務省の不祥事により辞任必至でしばらく蟄居するが、事実上のキングメーカーになる。既に岸田文雄政調会長への禅譲を最優先に人事手形が打たれた。場合によっては、石破茂元幹事長でもいい。皆、ポストと利権が欲しいだけだ」と明かす。

 憲法9条改正に長年反対し、学生団体「SEALDs(シールズ)」などとともに官邸や国会周辺でデモに参加し続けている都内の教員、野本直見さん(64)は、「とっくに安倍政権は真っ黒とわかっている」と語気を強める。続けて、「国民をないがしろにして、党利党略と保身だけで権力を持つ政治家を破壊したい。そのためには、私たち国民も、ちゃんと声を上げるべきだと思います。この国の政治レベルは(主権者レベルも)低すぎますね。もう少し誇りの持てる国に住みたいものです」。

 前に触れた野中氏のお別れの会では、「戦前の大政翼賛会のようにならないでください!」という、野中氏を全国区に押し上げた沖縄米軍基地使用を継続する法案可決に先立ち発言した97年4月の衆院本会議演説がビデオ映像で流された。「まさに今の自民党の状況を予言しておられた」(村上氏)。野中氏は生前、政治資金集めのパーティーを一度も開かなかった稀有な存在だったが、もうこの世にいない。

 国民に蔓延する白けた政治不信。劣化する議員。正義を錦の御旗に、批判に終始する危機感のないメディアの端くれとして、政治家のうそ偽りのない「言葉」に真剣に耳を傾けたい。

(ジャーナリスト・村上新太郎)

※AERA2018年4月30日-5月7日号より抜粋