「最初からしっかりできる子は多くありません。それでも、中1のうちから担任が丹念に目を通してコメントし、励ましながら信頼関係を築くことで、少しずつできるようになっていきます。特にここ3~4年でこの取り組みが定着し、毎日勉強するのが当然で、たくさん勉強する子をリスペクトするような雰囲気が生まれてきました」(山中校長)

 4人の子のうち3人を大宮開成の中高一貫部に通わせる母親はこう話す。

「中高一貫部ができて間もない時期でしたが、先生方が試行錯誤する姿に可能性を感じて入学させました。高校になるころには親が言わなくても勉強するようになるし、卒業した一番上の子は塾に一切行かずに早稲田大に進学できました。中学から私学は経済的な負担が大きいですが、塾通いの費用や子どもの負担を考えるとコストパフォーマンスは悪くない」

 10年に女子校から共学化した東京都市大学等々力中学校・高等学校(旧東横学園中学校・高等学校、東京都世田谷区)も教育改革の真っ最中だ。今春は早慶上理の合格者を109人と、5年前の3倍に伸ばした。

 同校では、大宮開成と同様に生徒が自身で時間管理をする指導を徹底し、毎週土曜日に翌週の学習計画を立てる時間を設けている。月曜日から金曜日までは授業の前に小テストを実施し、その出題範囲に沿った計画を立てさせている。

「当初は自動採点できる市販のテスト教材を使っていましたが、教員が授業に完全に対応するテストを自作し、採点するようになってから、生徒の学習態度が目に見えて変わってきました。毎日の授業をしっかり理解することで、テストで高得点が取れ、力がついていくことを生徒自身が実感できるのがよかったのでしょう」

 毎日のテスト結果の分析も重視し、クラスごとの平均点や正答率なども発表する。生徒の間には対抗心が芽生え、クラス内で教え合う姿が頻繁に見られるようになったという。

「6年間かけて身につけた時間管理と自学自習の習慣は、子どもたちの一生の財産になるはずです」(原田校長)

(ライター・森田悦子)

AERA 2018年4月23日号より抜粋