小島慶子(こじま・けいこ)/タレント、エッセイスト。1972年生まれ。家族のいるオーストラリアと日本との往復の日々。近著に小説『ホライズン』(文藝春秋)。最新刊は『るるらいらい 日豪往復出稼ぎ日記』(講談社)
小島慶子(こじま・けいこ)/タレント、エッセイスト。1972年生まれ。家族のいるオーストラリアと日本との往復の日々。近著に小説『ホライズン』(文藝春秋)。最新刊は『るるらいらい 日豪往復出稼ぎ日記』(講談社)
有働由美子さんはジャーナリストへ転身するという (c)朝日新聞社
有働由美子さんはジャーナリストへ転身するという (c)朝日新聞社

 タレントでエッセイストの小島慶子さんが「AERA」で連載する「幸複のススメ!」をお届けします。多くの原稿を抱え、夫と息子たちが住むオーストラリアと、仕事のある日本とを往復する小島さん。日々の暮らしの中から生まれる思いを綴ります。

【独立で話題の有働由美子さん】

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 毎度しつこくてすみません。「女子アナ」なんて仕事がこの世からなくなればいいと思っている小島です。

 最近、中野円佳さんの『上司の「いじり」が許せない』という本を読んで、いじりと称される職場での様々なハラスメントの実態に胸が痛くなりました。女性総合職や新入社員が、職場の“いじり”に適応しなければと自分を追い詰めてしまう……誰しも経験があるでしょう。

 で、気づきました。女子アナって、建前は日本語のプロだけど、実質はいじられロールに給与が支払われていたんだなと。体形や独身や年齢をからかわれても、セクハラされても、笑顔で応じるのが正解だなんて、ほんと誰も幸せにしないロールモデルだよ。

 有働由美子さんの独立が話題ですが、これはいよいよ30年続いた女子アナロールの終焉の兆しかもしれないと大いに期待しております。

 有働さんは「あさイチ」で中年女性のリアルな実感を語って視聴者の支持を得ました。そうだそうだ、テレビが本当に世間を映す鏡なら、画面の中でリアルで多様な生身の女性のありようを見せておくれよ。

 そして大事なのは、やはり井ノ原快彦さんです。有働さんに対する独身いじりに生放送で疑義を呈し、スタッフに注意。素晴らしい。各部署に一人ずつイノッチがいたら、いじりと称するハラスメントは一掃されるでしょう。

 女子アナ像の原型はテレビの内輪ネタが大ウケだった90年代の女子アナブーム。浮かれたテレビ局が社内の女性社員いじりを画面に出して大人気に。爾来30年、高給取りのOLのおふざけが商品になる時代はとっくに終わったのに、女子アナ的渡世に憧れる若い女性は後を絶ちません。だけど賢い学生は、きっと気づいているよね。

 NO MORE女子アナ。いじられ女子はオイシイなんて、もういい加減、終わりにしようよ。

AERA 2018年4月23日号

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小島慶子

小島慶子

小島慶子(こじま・けいこ)/エッセイスト。1972年生まれ。東京大学大学院情報学環客員研究員。近著に『幸せな結婚』(新潮社)。共著『足をどかしてくれませんか。』が発売中

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