観光学部棟。和歌山の豊かな森林を象徴するように100%国産材(さらにその80%が紀州材)で造られている。中に入ると木の香りが漂う(撮影/山本倫子)
観光学部棟。和歌山の豊かな森林を象徴するように100%国産材(さらにその80%が紀州材)で造られている。中に入ると木の香りが漂う(撮影/山本倫子)
観光学部棟の多目的スペース。学生が自由に使える憩いの場になっている。左から藤井さん、有吉さん、藤田教授、嶋川さん(撮影/山本倫子)
観光学部棟の多目的スペース。学生が自由に使える憩いの場になっている。左から藤井さん、有吉さん、藤田教授、嶋川さん(撮影/山本倫子)

 入試では首都圏の大学に人気が集まりがちだが、地方にも魅力的な大学が多数ある。和歌山大学もその一つで、特徴的なカリキュラムで注目されている。

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 キャンパスにたたずむ木造の建物。おしゃれなペンションと見間違ってしまいそうだが、れっきとした観光学部の学舎棟だ。和歌山大学は、国立大学として唯一、観光学部を有する。藤田武弘学部長は言う。

「従来の観光学には主として、観光業界の人材を育成する実学的な学びが期待されていました。本学部は、観光を『時間と空間を移動することによって起こる、社会現象や人の意識の変化』と定義しています」

 特徴的なカリキュラムのひとつが、リップ(LIP)と呼ばれる地域インターンシッププログラムだ。地域を訪れ、地元の住民と話をしながら、その地域を活性化するにはどうしたらよいか、解決手段を探る。

 学部4年の有吉裕梨さんは、岩手県奥州市で行うLIPプログラムに参加。実際の農作業に携わった経験から、卒業後は農業生産者と消費者をつなぐ仕事をしたいと思うようになった。

「有吉さんのように、地域再生の志を持つ学生は多いですね。和歌山と大阪以外から本学に入学した学生が全体の45%を占めています」(藤田教授)

 国際的な視野で、英語を使って観光を学ぶのがグローバルプログラム(GP)だ。専門課程の講義を英語で受講し、卒業論文も英語で執筆する。専門科目の3分の1が英語で開講されており、日本人学生のグローバル化と共に、海外留学生の誘致も見込んでいる。

 今年3月に卒業した嶋川久瑠実さんは高校時代から海外志向が強く、観光を国際的に学ぶため入学。16年に協定校の英国セントラルランカシャー大学に10カ月留学した。

 英国から帰国した3カ月後には、スペインのマドリードにあるUNWTO(国連世界観光機関)のインターンシップに参加。スペイン滞在中は、UNWTOが主催する「観光分野における能力開発に関する国際会議」の学生コンペにチームで応募し、優勝を果たした。

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