海洋コア総合研究センターに飾られている、深海で試料を掘る掘削機。硬い岩盤にあたったのか、先端部分が折れ曲がっている(撮影/写真部・小原雄輝)
海洋コア総合研究センターに飾られている、深海で試料を掘る掘削機。硬い岩盤にあたったのか、先端部分が折れ曲がっている(撮影/写真部・小原雄輝)
同センターのロビーに飾られているレアメタル。写真左の大きな塊がマンガンクラスト、右がマンガンノジュールという金属(撮影/写真部・小原雄輝)
同センターのロビーに飾られているレアメタル。写真左の大きな塊がマンガンクラスト、右がマンガンノジュールという金属(撮影/写真部・小原雄輝)

 定員厳格化の影響で、今年の入試では私立大学の難化が目立った。しかし地方に目を向けると、選択肢は広がる。地方にはその土地ならではの魅力や、独自の研究に取り組む大学が多数ある。高知県の高知大学も、そのひとつだ。

【写真】海洋コア総合研究センターに飾られているレアメタル

*  *  *

 日本は工業立国でありながら鉱物資源に乏しく、需要の大半を輸入に頼っている。しかし最近、列島周辺の海底に、さまざまな鉱物資源が存在することがわかった。特に注目されているのが、レアメタル(海底鉱物資源)だ。ハイテク産業に欠かせない金属で、たとえばスマートフォンにはネオジム、リチウムなどが使用されている。

 日本は領海を含めた排他的経済水域(他国に干渉されず、自由に資源を採っていいエリア)が国土面積の12倍もある。これは世界第6位の広さ。レアメタルが本格実用化となれば、資源大国に変身するかもしれない。

 海洋資源の研究が進む高知大学(高知市)では、さまざまな専門分野を持つ教員がレアメタルプロジェクトを組織し、協力して研究活動を行っている。メンバーの一人、上田忠治教授は言う。

「海洋資源の研究は、非常に範囲が広いのです。海底を計測する地学や物理学、掘削技術、レアメタルの成分を調べる化学など、領域は多岐にわたります」

 上田教授は採取したレアメタルを中心に、元素を組み合わせて新しい物質を作る研究を行っている。物質を測定するセンサー材料や、次世代電池の素地などの分野で特許を出願しており、将来の実用化をにらむ。

 研究の一方で、海洋人材の育成にも力を入れる。2016年には農学部を改組して農林海洋科学部を開設した。同学部の海洋資源科学科に新設された海底資源環境学コースは、海底鉱物資源に重点を置いて学ぶ。

 宮本洋好さん(3年生)は、東京都出身。海が好きで、海洋系がある学部への進学を志望していたところ、新コースの開設を知った。

「面白そうだと直感しました。今までなかった新しい分野に挑戦したいと思いました」

次のページ