ここで興味深いことに気がついた。地方大会では握手を認めていない地区がある。東京、神奈川などでは禁止している。

「以前、高野連から握手をしだすとキリがないのでやめようとの通達があり、それから都大会では実施していません」(東京都高野連)

「高野連からの通達もあり、選手が握手をしているのを見かけたら関係者の会議の席などで注意をしています」(神奈川県高野連)

 高野連では「推奨も禁止もしていない」はずだ。再度確かめると、こんな答えが。

「元会長の佐伯達夫さんが以前、全国の関係者が集まる連絡会議の席で、『お互い敵なのだから、選手同士が握手をするのはやめよう』と話したことが禁止と受け取られたようです。高野連としての通達ではありません」

 厳格な方針で高校野球の運営に臨んだ佐伯氏らしいエピソードだ。その佐伯氏が亡くなり、高野連が新体制に変わったのが80年。試合後の握手が増えた時期とちょうど重なる。玉木氏は「一緒にスポーツを楽しんだ同士の挨拶として、握手するのが自然だと思う」と、容認派だ。

 かつて地方大会で試合後に握手をしたという20代の元高校球児は選手の心情をこう代弁する。

「高校野球ではみなつらい練習を乗り越えて試合に臨んでいる。負けたとしても同じ気持ちを持っている相手に『自分たちの分まで勝ってほしい』とのメッセージを託すのです」

(ジャーナリスト・桐島瞬)

AERA 2018年4月23日号