仮想通貨交換業者「コインチェック」の不正流出で注目されている仮想通貨。昨年末から今年初めにかけて、ビットコインをはじめとする相場は急騰し、その後暴落している。何が問題なのだろう? 毎月話題になったニュースを子ども向けにやさしく解説してくれている、小中学生向けの月刊ニュースマガジン『ジュニアエラ』に掲載された、朝日新聞客員論説委員・千葉大学教授・神里達博さんの解説を紹介しよう。

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 歴史的に見ると、最初にお金(通貨)の役割を果たしたのは、貝殻や石など自然界のものであった。後には、金や銀などの貴金属がコインとして使われるようになっていく。これらは、希少性によってその価値が裏づけられていた。珍しいものに価値があるというのは、人類史を通じて普遍的な考え方なのだ。

 一方で、現実に使う価値がある「モノ」も、通貨の役割を果たしてきた。たとえば江戸時代には米が経済価値の基準であった(今も、原油や穀物など、それ自身に価値がある商品が、国際的な取引などで実質的に通貨として使われている)。

 近代に入り、社会全体の経済規模が大きくなると、それに見合うだけの貴金属を用意できなくなったため、紙に印刷した「紙幣」が通貨として使われるようになる。現在では、各国の「中央銀行」が「銀行券」と呼ばれるお札を独占的に発行している。

 しかし当然ながら、米や原油と違って、モノとしての紙幣に「使い道」があるわけではないし、印刷すればつくれるので、金貨のような希少性があるわけでもない(ただし、簡単に偽造ができないよう、精巧につくる必要はある)。

 では、紙幣の価値を支えているのは何か。それは、「現実にそれによってさまざまなモノを買うことができるはず」という「信頼」である。

 さて、「ビットコイン」をはじめとする仮想通貨が今、いろいろな意味で注目を集めている。これは、IT技術によって、通貨の「希少性」と「偽造の難しさ」を実現したものである。そのシステムは難しい数学的な理論に基づくが、ごく簡単にいえば、「ブロックチェーン」と呼ばれる、一種の「貸し借り帳簿」がこの技術の正体だ。たとえば、「AくんがBくんにコインを1枚渡した」とすると、そのことが帳簿に電子的に追記される。こうして、コインがやりとりされる度に、一つの共通の帳簿に取引がすべて記録されていくのだ。

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神里達博
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