松坂:そうなんです。監督が描いた絵コンテに沿って、リハーサルを何度も繰り返しました。「感情がこうなると、自然とこういう行動になるよね」と確認し合いながら。そんな撮影をしていたら、自然と体も引き締まっていきました。

──松坂さんの背中もお尻も、美しかったです(笑)。

松坂:動き続けたり、きつい体勢をキープしたりする撮影が続いたので、最後のほうは食事制限を少しするだけで、キュキュキュッと(笑)。

石田:リョウが普通の大学生からプロの娼夫になっていく様を表現するために、体を作っていったんだね。

──映画をご覧になっていかがでしたか?

石田:小説のなかのセリフがそのまま生きているのが少し恥ずかしかったです。声に出して読まれることを想定していなかったから。桃李くんのいい声で話されると、ゾクッとした。この小説を映像化したいというオファーは絶えずありましたが、最終的にリョウ役が桃李くんに決まって本当によかった。

 リョウは、肉体的にはすぐに汚れてしまう役ですが、本当に汚れてはダメなんです。ベッドの上では娼夫として、あらゆるテクニックを駆使し、時に変態のようにさえ振る舞う。それでも最後までピュアで輝いていなければいけない。そういう役なんです。桃李くんでなければ、こうはいかなかった。

──そんなピュアなリョウを演じる時、松坂さんは、どんなことを心がけていたんでしょう。

松坂:映像でしか表現できない繊細な心の動きをどう演じるか、ということには気を使いました。あとは、女優さんとのコミュニケーションが難しかった。舞台では稽古が1カ月くらいあったので徐々に近づいていけたのですが、映画の撮影は、一番長くて3日間ほどでしたから。舞台とは違う距離の詰め方をしなければ、と考えました。

石田:それは、限られた短い時間のなかで相手の欲望を満たすリョウと通じるところがあるよね。桃李くん自身も、女性一人ひとりが持っているプライベート空間にスルッと入っていくの、得意じゃない(笑)。

松坂:そこは石田さんと同じく、姉と妹に挟まれて育った環境が生かされているかもですね。

──女性に対する見方に何か変化はありましたか?

松坂:女性だけではなく、他人に対する「優しさ」が自分のなかで増した実感があります。

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