指導書では、発音に不安を持つ教員のために、例文ごとにQRコードを記載。スマホで読み取れば、正しい発音を確認できるといった工夫も凝らした。

 小学校英語の激変は、中学校の英語にどう影響するのか。SAPIX小学部・中学部などを運営する日本入試センターの當山淳さんは言う。

「中学の新指導要領が目標とする単語数も、現在より3~5割多い1600~1800語になります。授業も基本的に英語で行われることになるので、かなり難度は上がるでしょう」

 学習レベルとともに當山さんには気がかりなことがある。個々の生徒の中学入学時の「実力差」がこれまで以上に開かないかということだ。

 現在、小学校での英語教育は、自治体や学校によって大きく異なる。小5で初めて「外国語活動」を始める学校がある一方で、小1から始める学校や、すでに「教科」に格上げ済みの学校もある。

「教科」ではなかったために、ALTの活用法や目指すレベルが現場の裁量に任されてきた側面もあり、子どもたちの英語力にはバラツキが生じている。

 その差をさらに広げかねないのが、4月からの移行措置だ。大半の学校は5、6年生について年間15コマ増の50コマとなるが、先行組の中には一気に70コマにする学校もある。県下の6年生で一斉に教科化する福井県のような例もある。

 當山さんによれば、現在SAPIXに通う中1生でも、単語テストで定着に力を入れている小学校から来た子と、テストなしの学校から来た子との差は大きいという。

「英語はスタート時点でのちょっとした差で自信をなくす子も多い。移行措置の中で、教科として学んだ子と、そうでない子の差が広がらないようにすることが課題です」(當山さん)

(編集部・石臥薫子)

AERA 2018年4月23日号より抜粋