「ここまで復興できたのは、みんなが希望をもってやってきたから。これからも希望を忘れなければ、いいなと思って」

 同校の合唱部長の高橋咲野(さきの)さん(17)は振り返る。

 作詞のきっかけは、宮城県内の市民合唱団でつくる「宮城のうたごえ協議会」が昨年7月、同校に「合唱曲をつくりませんか」と呼び掛けたことだ。当時の1年生が制作委員となり、歌詞に盛り込みたいフレーズを全校生徒に募集した。

「後輩へと引き継ぐ命のメッセージをつづってください……」

 そんな制作委員の呼びかけに、350以上の言葉と歌詞が寄せられた。それを取りまとめて構成、宮城県岩沼市在住の音楽家・小林康浩さんが作曲を手がけた。

 咲野さんが寄せた言葉の一つが、タイトルに使われた「希望」だった。どうしても「希望」の二文字を入れたかったという。

 沿岸部にあった校舎は、地震による津波で2階まで浸水した。プレハブの仮設校舎で授業を続けてきたが今年3月、ついに新校舎が完成した。

「みんな幸せなのが希望かなって思います」(咲野さん)

 歌のタイトルには、震災で大切な人を亡くしたり、今も仮設住宅で暮らしたりしている人にも希望を抱いてもらいたいとの願いが込められている。

 歌詞は第3番まであり、咲野さんは繰り返し出てくるこんなフレーズを自分に問いかけながら歌った。

──残された私たちにできることはなんだろう──

 咲野さんは言う。

「震災は絶対に忘れちゃいけない。風化させず次の世代に引き継ぐのが、私たちにできること」

 復興への願いと祈りを込めた2時間のライブ。音楽が持つ力を感じながら、笑顔にあふれた「お祭り」となった。(編集部・野村昌二)

AERA 2018年4月16日号

著者プロフィールを見る
野村昌二

野村昌二

ニュース週刊誌『AERA』記者。格差、貧困、マイノリティの問題を中心に、ときどきサブカルなども書いています。著書に『ぼくたちクルド人』。大切にしたのは、人が幸せに生きる権利。

野村昌二の記事一覧はこちら