「その通りです。落語家にはサービス業のような一面もあって、自分が表現したいことをやればおしまいなのではない。同じことを言っても笑ってもらったら成功だし、だめだったら失敗。正解がひとつではない世界です」

 落語の世界には、師匠から稽古をつけてもらうといった形式知と、前座修業のように言葉として伝達できない暗黙知の両方がある。

「立川談志師匠がおっしゃっておられましたが、落語は伝統芸能であると同時に大衆芸能でもある。矛盾する二つの要素を常にやっています」

 的確に情報処理するというAI的な力に加え、その場の状況やそこにいる人の感情をくみ取り共感する力が真の読解力につながる。それこそAIにはない人間の能力と言えるだろう。

 セクシー男優のしみけんさんは、著書『やっぱり熟女がいちばんでした。』の中で「若い人に多い『ぼく、わたし』ではなく、熟女は『周りの誰か』を主語として話す」と指摘している。熟女の高い共感能力が二人称、三人称を主語とした話し方につながっているのだ。この熟女のあり方を学び、新たな視点を持った。

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