この「隠蔽の泥沼」から陸自はどう抜け出すのか。小野寺氏は4日、イラク派遣の日報が1年前に研究本部で見つかっていたことについて「どの範囲まで共有されていたのか早急に調査し、厳正な措置も含め対応したい」と記者団に語った。

 だが、上げるべき情報を止めた者を罰するだけではもぐらたたきだ。なぜ存在する文書について外から聞かれると「ない」ことになってしまうのか。忘れてはいけない不祥事がある。南スーダン日報問題での特別防衛監察で明るみに出た、陸自の中核組織での隠蔽だ。

 情報公開請求に対応したのはPKOを担当する中央即応集団(CRF)の司令部。当時の副司令官が「日報が該当文書から外れるのが望ましいと意図し、行政文書の体を成していないと指摘した」。それが元で陸自の結論が「文書不存在」となった上に、それにあわせるように日報が捨てられまでした。

 そもそも、軍隊は「敵」に対しては情報を隠すものだ。

 戦前の帝国陸軍参謀本部の将校で、今は亡き陸自幹部に聞いた話がある。「敗戦直後、東京・市谷の参謀本部前に広がる焼け野原で、占領軍が来る前にと文書を焼き続けた」。そうした「軍としての常識」(防衛省幹部)は今も変わらず、例えばもし偵察機が他国に不時着する場合は、集めた電子データを真っ先に消すという。

 ただし陸自の対応で気になるのは、情報公開を求める国民や国会で追及する野党までも「敵視」していないかだ。

 確かに、特に陸自の海外派遣をめぐっては、情報管理を徹底し現地部隊の安全に細心の注意を払いたい自衛隊と、憲法9条などによる自衛隊への制約をふまえ外からウォッチしようとする側との間で緊張が生じる。

 だが、南スーダンの件でCRF副司令官は一線を越えた。「部隊情報の保全」のため日報は行政文書でないと強弁した。本当に機微なら法律上は不開示にできるにもかかわらずだ。

 この副司令官が特別防衛監察で述べた理由がもう一つある。「開示請求の増加に関する懸念」。陸自ではこれがこの春から深刻になりかねない。新任務に対応するための「創隊以来の大改革」があるからだ。

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