姉:私も仕事でヘコんだことはありますが、母がそばにいてくれたことが幸いしました。「こんなに頑張っている人がいるのに、少々のことでへこたれるなんて許されない」と、気持ちを切り替えられましたからね。

母:自分が落ち込んだ経験って、不思議と思い浮かばないですね。

妹:ずっと成績がいいからでしょう。私の場合は「保険を売りつけに来た」などと、嫌みを言われたら、元気をくれるお客さまに会いに行くようにしています。おかげで、次の日まで引きずらずにすみます。

母:一つ思い出しました。ある企業で講演をした後のパーティーで、私が最初にあいさつすることになっていたんです。そしたら、別の企業の社長が「きさま、私より先に話をするとは何事だ!」って怒鳴られて。あのときは落ち込みました。多くのお客さまに信頼いただいてセールスの頂点に立っても、「きさま」呼ばわりされる。営業員の社会的評価はまだ低いと痛感しました。

妹:そういう経験があるから、おごらないでいられるんですよ。私は産休が明けて復帰するときは、いつも気が重くなります。この仕事は、毎月がゼロからの出発。たとえ今月たくさんの契約をいただいても、翌月がゼロならば「未挙績」。あるとき、お客さまに「辞めたくなる」って話したら、「これをあげるから考え直しなさい」と、自分がつけていたカルティエの腕時計を私にくれました。「はい、わかりました」って即答しました。

母:現役時代は毎月8件の契約をいただくことを課していました。2件で100億円分以上を集めたときも、ちゃんと8件をものにしましたしね。その積み重ねが私を強くしたし、金字塔にも到達できたんだと思います。

姉:つくづく自分に厳しい人ですよ。やっぱり日本一になるには、必ず理由がありますね。

母:この仕事に向いているのは、努力を続けられる人。頂点を目指すなら、うんと努力しないと。あとはできれば、そこそこ愛嬌があって、明るい性格であること。チャレンジ精神が旺盛なのも大切です。

次のページ