●付けまつげでバーンと

――ニューヨークは、希望して赴任されたんですか。

有働:サラリーマンですから。38歳になっていたので今からアメリカへ行くと婚期も出産も逃すだろうし、ステップアップというより不安を抱えての赴任でした。行くと、英語は通じなくて自尊心はズタズタ。アシスタントの英語さえも、録音して毎晩単語を起こし、翌日の指示を夜中に作っていました。初のアナウンサーとしての特派員だったので、負けて帰るわけにはいかない。「今、ここでトラックが死なない程度に轢いてくれて、日本で治療しなきゃいけないようにならないかな」と2回くらい思いました(笑)。でも、だんだん英語も聞きとれるようになり、仕事も回り出して。

――「あさイチ」のキャスターが決まったとき、ニューヨークにもっといたかったんですよね。

有働:いたかったし、独身でニューヨーク帰りなんて、主婦に最も嫌われるタイプですよ。「私なら、消すな」って(笑)。でも、クビになってもいいから自分でコメントしていこうという覚悟もできていました。

――有働さん、付けまつげですよね。「あさイチ」から?

有働:スポーツ担当の時代からです。5%の「嫌い」の中に、とにかく有働由美子が嫌いだ、あの女のせいでNHKは信頼を失っているという声があり、その中に「あの付けまつげが浅ましい。見ていて痛々しい」というのがありました。人の感情はどうしようもないのですが、さすがにそういうコメントには落ち込み、2~3日思ったことを言えなくなる。付けまつげ、悪いですか。

――私も付けてみたいなって。

有働:仕事用にはいいですよ。私、顔が平板だから、なんか自信のない人みたいになっちゃうので、付けまつげでバーンと元気つけよう!って。

●顔以外でカバーする

――「おはよう日本」のキャスターに起用されたときの記者会見で「私は前任者の草野さんのように美人じゃないので」と。顔にコンプレックスがありますか。

有働:ありますよ。同期の女性アナウンサー7人のうち私以外みんな美人ですから。高校までは共学だったので、勉強や運動ができることが、可愛いと並列におかれていたけれど、国立を落ちて女子大に入った瞬間、美醜が女の価値を決めるという現実に直面しました。とくにバブル時代でしたから。

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