生保では、上場保険グループを中心に、主要生保の多くがEVという企業価値を一定の前提のもとに算出した指標を公表しており、投資家などが広く活用している。大きいほど価値が高い。金利水準や株式・不動産価値の変化、あるいは、死亡率や解約失効率の変動がEVに与える影響額も公表しているので、その会社の経営リスクの特徴をつかむこともできる。

 損保の経営指標として挙げたコンバインドレシオは、基礎的な収益力を判断する手がかりとなる。収入保険料に対する支払い保険金+経費の割合を示したもので、100%を下回れば保険収支が黒字、上回れば赤字ということになる。先述のとおり、自然災害の発生次第で支払いが大きく振れるため、単年度のコンバインドレシオで判断するのではなく、中期的なトレンド、あるいは自然災害による影響を除いた数値で見たほうがいい。

 ちなみにコンバインドレシオが100%を上回っていても、損保は資産運用収益により赤字決算を避けられる。だが、運用収益をあてにした損保経営は、一般的には健全な状態とはいえないだろう。

 生損保ともに「これだけ見ればいい」という万能な指標はなく、複数の指標を併せて見たほうがいい。また、比較的歴史の浅い会社では新しい契約を順調に獲得しているかも重要だ。(保険アナリスト・植村信保)

AERA 2018年4月9日号より抜粋