中小企業診断士の資格を取得するには1次と2次の二つの試験に合格しなくてはならない。その合格率はわずかに4~5%だという。

「2次試験の問題は、企業の経営状態を記した問題に対して、200字以内で最善の答えを導き出せといった、大学入試の国語のような問題なんです。実際には企業が抱えている問題が一つとは限りません。いろんな可能性を想定したら、とても答案用紙に収まりきらない。結局、出題者の意図をくみ取って答えを導くだけ。経営のプロフェッショナルになるための通過点ではなく、資格を取るためだけの勉強に嫌気が差した」

 最終的にBさんは20万円の授業料を費やしながら、中小企業診断士の試験を辞退。金融機関を退職して、友人の会社を手伝いながら、現場で経営を学ぶ道を選択した。

「会社にぶら下がっていた人間が、今度は資格にぶら下がろうとしていただけなのかもしれません。それに気づけただけでもよかった」(Bさん)

思いつきで始めたことは、長続きしないものだ。その典型例は、女性の会社経営者Cさん(40歳)だ。

「東京五輪を控えて、外国人旅行者が増えればビジネスチャンスが増えるかもしれないので、まず語学を身につけようと考えました。ただ、英語ぐらいなら独学で身につけられるんじゃないかとも思ったんです。それで、最終的に選択したのがアラビア語。全世界の話者数でいうと、実は5番目に多いんです。にもかかわらず、日本人で話せる人は少ない。イスラム国によるテロが繰り返しニュースになっていた時期でもあったので、万が一拉致されても切り抜けられる力が身につくかもしれないという、妄想も働きました(笑)」

 計40回の授業料は前払いで、38万円にも達したという。少々高い出費だったが、入学早々、現実を知ることに。

「大半は中東への赴任を控えたりしている商社マンばかり。必要に迫られて学ぶ人と、思いつきで勉強する人とでは真剣味が違う。1、2度講座を欠席してから、まったくついていけなくなって、すでに1年以上足が遠のいています……」

(ジャーナリスト・田茂井治)          
AERA 2018年4月2日号より抜粋