──では、そういう本をつくっていた末井さんに対する印象はいかがですか?

尾野:映像だけで見ると魅力的ですよね(笑)。

末井:映像だけ(笑)。

尾野:魅力的な部分と魅力的でない部分が紙一重というか。でも、総合すると魅力的です! 生き方とか少しダラしないところとか、でもやりはじめたらとことんやるというか。革命を起こすんだ! みたいなエネルギーの溢れる人は、魅力的に“見えちゃう”んですよ(笑)。

──間違って見えてしまう、という言いぶりですね……。

末井:でも、そのとおりなのかもしれない(苦笑)。

尾野:何かに熱中している男性って一番格好いいんですよね。

──そんなお二人は、今作の主題歌を一緒に歌われてますね。

尾野:あれは本当に恥ずかしい。主題歌を頼まれたときも「本気ですか!?」って感じでした。収録の時も歌手じゃないから歌い方がわからなくて、「ささやくように」って言われても、「ささやいたら歌えなくない?」という感じで。自分のお芝居は見ていて何とも思わないけど、エンディングであの曲がかかった瞬間、私の顔は真っ赤になっていたはず(苦笑)。

末井:でも、尾野さんの声はすごいエロティックでよかったです。今作の音楽を担当しながら、荒木さんの役で出演されている菊地成孔さんの言葉を借りると、「霊力」を感じる。

──どういうことですか?

末井:菊地さんは今回の映画は「マザコン映画」だって言うんですよね。僕が出会う女性も付き合う男の人も、すべて母親の変形だって。だから、主題歌は僕と“母親”に歌わせたいと考えてたみたい。亡くなった母親を演じる尾野さんと僕が一緒に歌うことで、完成するんだと。

尾野:エンディングの曲まですべて聞かないと、映画のよさが伝わらないってことですね(笑)。

(ジャーナリスト・田茂井治)

AERA 2018年4月2日号