──末井さんが最初に手掛けた雑誌「NEW self」は猥褻文書販売容疑で発禁処分をくらい、その後に創刊した「ウィークエンド・スーパー」で写真家・荒木経惟さんを世に送り出し、「写真時代」は30万部を超す絶頂期にこれまた発禁処分……。

末井:あれね、警察が編集部に踏み込んできたとき、僕は内心「やったぜ!」って思ったわけ。だって、もうやる気なかった。クレームが多かったし飽きてたし。でも、「やめます」とは言えないんです。会社の稼ぎ頭だったし、連載陣の生活がかかっていたから。でも、絶頂期に発禁になれば格好よく終われるじゃないですか。タイミングもよくて、あの直後からエロ本が売れなくなっていった。それで「パチンコ必勝ガイド」を作ったらパチンコ業界が急成長したんです。運がいいんです。

──ストリーキングのシーンも印象的でした。

末井:あのシーン、実は僕も通行人役で出演してるんです。あと、バックミュージックのサックスは僕が吹いてます。昔の自分が裸で走り回る場面を第三者の視点で眺めるのは不思議な体験でしたね。

尾野:私もあのシーンは気になって、佑とも「本当に末井さん、こんなことやったの!?」って話してました(笑)。

末井:いまだに鮮明に覚えていますよ。1970年11月25日の朝です。途中でペンキを被って、道路に転げまわって“作品”を作ったんですよね。そしたら、その日の昼に三島由紀夫さんが市谷で割腹自殺した。すごい寒い日だったのに、興奮して寒さも感じなかったのを覚えてます。“やりきった感”があったのか、その直後は腑抜けみたいな生活を送ったんですけど……。

──念のためですが、尾野さんはエッチな本というものを見たことはあります……?

尾野:いや……。

末井:あるわけないでしょ!

尾野:でも実は、私が生まれ育った田舎では、年2回ぐらい“道掃除”というのをやるんですよ。村の人たちみんなで山を掃除する。そうすると、なぜか段ボール箱いっぱいのエッチな本と妙なオモチャがゴミとして出てくるんです……。どこにも捨て場所がなかったんでしょうね、捨てた人は。私たちはそれを段ボール箱ごと回収して、一旦家に置いてからゴミに出すんですけど、子どもの頃って「見ちゃダメ」って言われるほど見たくなるじゃないですか? もう見たくてしょうがなくなって、一度だけこっそり見ちゃったんです。確か、小学生ぐらいの頃。もう言葉にできないほど下品なシーンのページを開いてしまって、衝撃を受けました。それで「女の子は見ちゃいけないものなんだな」と勉強しました(笑)。

末井:相当、アブノーマルな雑誌を見てしまったんですね(笑)。

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