小林二三子さん(81)。規則正しい生活を送ることが元気の秘訣という。エステ後にお茶を淹れてもてなすのが習慣(撮影/写真部・加藤夏子)
小林二三子さん(81)。規則正しい生活を送ることが元気の秘訣という。エステ後にお茶を淹れてもてなすのが習慣(撮影/写真部・加藤夏子)
筒井幸彦さん(72)。籠バッグづくりに勤しむ傍ら、自動車関連の本も執筆する(写真/筒井さん提供)
筒井幸彦さん(72)。籠バッグづくりに勤しむ傍ら、自動車関連の本も執筆する(写真/筒井さん提供)

 超長寿社会をとなりつつある日本。そんな中、自身の特技を生かして生き生きとセカンドキャリアを歩むシニアたちがいる。

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 栃木県宇都宮市。国道沿いにある衣料品店「ファミリーショップこばやし」を、息子と共に経営する小林二三子さん(81)は、現役のエステティシャンだ。

 もともと肌が敏感で、使えるスキンケア用品や化粧品が限られていた小林さんは、52歳の時に初めて肌に合う製品と出合った。そして、訪問販売が中心のナリス化粧品に興味を持ち始め、同年に同社で教育を受け、エステティシャンの資格を取得。衣料品店を営みながら、顧客の自宅に行ってエステをするようになった。

 しかし、最初は本当に親しい人にしか声をかけられなかったという。化粧品のサンプルを渡し、地道に信頼関係を築くことを心がけたことで、一人ずつ顧客が増えていった。

 小林さんの特徴は手が大きいこと。顧客の顔全体を包み込んでマッサージをするため、気持ちいいと感想をもらうことがある。74歳の時には衣料品店をリフォームしてホームエステの環境を整えた。

 背筋が伸びた佇まいと、ハリのある肌が印象的な小林さんだが、4年前、顔と手に大やけどを負う出来事があった。その当時を「ゆでダコみたいだった」と振り返る。だが、化粧品を使って丁寧にケアを続けたところ、1カ月で元の状態に戻ったという。周りから「大変でしたね」と言われても、「これでケアの大切さが伝わるからよかった」と本人はポジティブだ。エステのプロとしての説得力も増したという。

「今の時代、個人の衣料品店に足を運ぶ若い顧客は減り、学生服の需要も季節が限られています。収入はパート並みですが、家計の潤いになっています」(小林さん)

 現在は施術する機会は年に数回程度に減らし、後輩の育成に力を注いでいるというが、周りに役に立つ仕事を続けながら、自分自身もさらに奇麗になっていきたいと話す。

 厚生労働省がまとめた「都道府県別にみた平均余命」(2015年)では、長野県が女性1位、男性2位となった。「長野県シニア大学」などでシニア世代の就業や社会参画を後押ししている同県には、セカンドキャリアを歩んでいる70、80代が多い。

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