ツイッターなどで積極的に発言をすることでも知られている。

「政治的な発言は映画作家としては損なことばかりで、本当はしないほうがいいんですけどね。でも東日本大震災のときにあまりにも言いたいことが出てきてしまって。いまはこれも一市民の責任、と思ってやっています」

 40歳を超えるまで「サボっていたな」という気持ちもあった。

「僕があれこれ言わなくても世の中はいい方向に向かうものだろうと楽観的に思っていた。でもそうじゃない。下手すると民主主義が僕らの世代で終わってしまうんじゃないか、というほどの危機感を感じています。僕が何か言っても変わるわけじゃないけれど、一人分の責任は果たそう、と」

 しかし作品はあくまでも寡黙だ。そこは切り離している。

「映画を政治的な用途に使い始めたら終わりですから。でも僕という人間が撮っている以上、どうしても映っちゃうんですけどね。『港町』に映っているのはいまの世の中に起きている大きな変化の、ある種の帰結だと感じます。魚がいなくなり、漁師の仕事も正当に評価されずに消えていく。人間が何千年も繰り返してきた営みのひとつが消えかかっている。それはいまの世の中が進んでいる方向と、無関係なはずはないんです」

(ライター・中村千晶)

※AERA 2018年4月2日号