一方、佐川氏の証人喚問に最後まで抵抗しながら自民党に押し切られた格好の官邸も、もはや求心力低下の歯止めが見つからない。

「高らかに憲法改正案を披露する場のはずだった党大会でも、演説の内容は抑制された文案に差し替わって9条についても方向性を示すだけになる。憲法改正自体がもう無理ですから。昭恵夫人の証人喚問には絶対応じない姿勢の首相も、愛媛県今治市の加計学園関係の文書改竄疑惑が発覚したことでさらに窮地に追い込まれ、かなり弱気になっています」(政府関係者)

 プーチン氏がロシア大統領4選を果たして間もない3月21日に開かれた日ロ外相会談でも、安倍内閣の支持率アップにつながるサプライズはなかった。ロシア政治が専門の木村汎(ひろし)・北海道大学名誉教授(81)が語る。

「5月と9月に2回も訪ロを約束させられるなんて完全に足元を見られている。プーチンと安倍首相はイエスマンの小物しか側近に置かない国粋主義的な強権政治家という共通点はあるが、器が違い過ぎる。旧ソ連時代の諜報機関を経て裸一貫でもまれて生き抜いてきたサバイバーと、苦労知らずのお坊ちゃん育ちでは人間力が比較にならない」

 同じ身命を賭して仕えるならという例えは酷かもしれないが、森田氏は加計学園問題で「行政がねじ曲げられた」と官邸の圧力を告発した前川喜平・前文部科学事務次官を引き合いに出し、佐川氏にこうエールを送る。

「前川氏を見習い、目を覚まして正義のために戦うべきだ。安倍首相に殉ずるなんてバカなことをやっている場合じゃない。経産省から出向して昭恵さん付き政府職員だった谷査恵子さんも、絶対に証人喚問すべきです。国有地売却に絡んで財務省に再三問い合わせをした経緯の文書を森友学園側にファクスしている本人ですから、疑惑の解明には外してはいけない公務員です」

(編集部・大平誠、ジャーナリスト・村上新太郎)

AERA 2018年4月2日号