2017年4月の衆院財務金融委員会に出席した佐川宣寿・財務省理財局長(当時) (c)朝日新聞社
2017年4月の衆院財務金融委員会に出席した佐川宣寿・財務省理財局長(当時) (c)朝日新聞社

 前代未聞の決裁文書改竄(かいざん)の発覚から3週間余。かつて最強官庁とうたわれた財務省のスリートップ、国税庁長官にまで上り詰めた佐川宣寿・前理財局長(60)が3月27日、衆参両院での証人喚問に臨む。問題の核心はただ一点。学校法人森友学園への法外に安価な国有地売却に、安倍晋三首相夫妻がどう関与していたのか。この疑惑を玉虫色で終わらせたら、民主主義は崩壊する。

「日本会議という戦前的国家教育を目指している勢力が、学校経営を拡大しようとしていた人物と組み、右翼的な思想を強く持つ昭恵夫人を巻き込んで計画を進めた。それを官庁ぐるみで覆い隠そうとしたけどバレてしまったということ。一番深刻なのは、政治家と役人が順法精神と健全な道義心を失ったことです。財務省は丸ごと堕落して政治家の手先になり、わが日本国をめちゃくちゃにしたんです」

 森友学園問題の構図と本質をこう読み解くのは政治評論家の森田実氏(85)だ。霞が関の現役キャリア官僚も、こう自嘲する。

「これまでの安倍1強体制もひどかったし、今の財務省もひどいものです。ことここに及んで官邸の内閣延命至上主義に逆らえない官僚の凋落(ちょうらく)ぶりを笑ってください。そして、現在の経済産業省支配の官邸も完全に限界に来ています。出向で内閣官房に所属している私に官邸への情報アクセス権がないのは異常だと思う。国民のためには取り換えたほうがいいと思います」

 2014年の内閣人事局の発足で、幹部職員の人事権が官邸に集中したのは事実だ。だからといって人事権者に尻尾を振って虚偽答弁をし、決裁文書を改竄してまで関与を隠すのが正しいあり方だとは当の官僚たちも思っていないに違いない。かつての部下たちのこうした歯がゆい気持ちに、佐川氏は証人喚問でどう答えるのか。元東京地検特捜部検事の郷原信郎弁護士はこう懸念する。

「弁護士が補佐で就けば、決裁文書に関する質問は、刑事訴追を受けるおそれがあるという理由で証言拒否をするでしょうし、国会答弁に関する質問も、改竄に関連するとの理由で拒否するかもしれない。そうなると答えられるのは、答弁内容の決定の流れの一般論ぐらいになる。質問側の攻め手の問題以前になってしまう可能性が高い」

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