サイバー攻撃とサイバーセキュリティーは表裏一体だ。敵国に工作する技術は、逆にそれを自国はどう防ぐのかの技術にもつながる。同時に、友好国が敵国とならないように監視する活動にも活用されているのだ。

 13年にNSA元職員のスノーデン氏が、メルケル独首相の通話盗聴といった米国の監視活動を暴露して大問題となった。スノーデン氏はその後、ダムや病院などの日本の社会インフラにマルウェアを仕込み、同盟国でなくなったら起動するようになっているとも語ったとされる。

「同盟国に裏切られるのが、一番手痛い仕打ちを受けることになる。インテリジェンスの世界では、同盟国は最重要なターゲット」と土屋教授。日欧のみならず、北朝鮮と急接近する韓国も、米国によるこうした監視工作を受けているとみられる。

 一般人が入り込めないインターネットの深層部分で起きているサイバー戦争で、世界は「第2次冷戦」に突入したとも言われる。米ロはもちろん、英中朝、イスラエルやイランなども「サイバー戦争」に向けて技術向上に躍起となる中、日本は「2周遅れの危機的な状態」と土屋教授。標的となるばかりか、他国のサイバー攻撃部隊の拠点として日本が利用されることも「大いにありうる」と問題提起している。(編集部・山本大輔)

AERA 2018年3月26日号