新旧OB2人がそろってショックを隠せない、誇り高き財務官僚の「組織的犯罪」。14年5月に新設された内閣人事局が、各省庁の審議官級以上の幹部職員の人事を握ったことが、官僚たちを「官邸のイエスマン」に変えたのか。藤井氏が言う。

「一極集中の同心円だと社会は悪くなる。複数核がある楕円形の論理が社会をよくする道。大平正芳元首相はこう言われていた。至言だと思います」

 こうしたOBの怒りに対し、佐川氏は国会の証人喚問で何を語るか。政府関係者によると、「捜査中なので何も言えない」に終始するしかないという。

●次は「麻生支配」なのか

 だが、世論や野党の追及は続き、綱渡りの政権運営は確実だ。自民党幹部は「安倍3選は完全に消えた。重鎮はすでに見切っている。出馬すらできないだろう」と言い切る。

「ポスト安倍」では岸田文雄政調会長が最有力とみられていたが、世間の知名度は一向に上がらず、「岸田総裁では選挙で勝てない」(自民党閣僚経験者)と、永田町では評判が芳しくない。

 その半面、復権の可能性が出てきたのが、12年の総裁選で党員票のトップだった石破茂・元地方創生担当相だ。注目度で他を引き離す小泉進次郎・党筆頭副幹事長が「石破応援で全国行脚するようです」(同)。

 改竄疑惑が報じられた翌3月3日、安倍首相は都内ホテルにある会員制ジムで汗をかいていた。居合わせた、安倍家と旧知の財界人が語る。

「すぐにいなくなり、2時間以上戻ってきませんでした。いつもより不在が長かったですね。母の洋子さんは、よく私に『相談事はいつも私のところ。最近は愚痴ばかりで、困ったものよ』と、こぼしています」

 前出の政府関係者は、「総理は麻生氏の言いなりのようで、次に誰が総裁になろうが、『麻生支配』でしょう。渦中の麻生氏が新キングメーカーになるとすれば、実に皮肉です」と、冷ややかだ。(編集部・大平誠/ジャーナリスト・村上新太郎)

AERA 2018年3月26日号