竹増貞信(たけます・さだのぶ)/1969年、大阪府生まれ。大阪大学経済学部卒業後、三菱商事に入社。2014年にローソン副社長に就任。16年6月から代表取締役社長竹増貞信(たけます・さだのぶ)/1969年、大阪府生まれ。大阪大学経済学部卒業後、三菱商事に入社。2014年にローソン副社長に就任。16年6月から代表取締役社長
経営者に必要なのは「テイスト」(※写真はイメージ)経営者に必要なのは「テイスト」(※写真はイメージ)
「コンビニ百里の道をゆく」は、47歳のローソン社長、竹増貞信さんの連載です。経営者のあり方やコンビニの今後について模索する日々をつづります。

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 会社の在籍期間に応じて役職が上がる時代ではなくなりました。いわゆる出世も「エスカレーター式」ではなくなっていますよね。

 もちろん今も、生え抜きの経営者のほうが主流ではありますが、他社から経営陣を招聘したり、一度退職した社員が経験を積んで幹部として復帰したりするケースも増えてきています。起業を目指す若い方もたくさんいます。

 その意味で、どこからでもいつからでも経営者を目指せる時代。そんな時代に、私自身が「経営者にとって大事な資質だ」と考えていることをお話ししたいと思います。

 一言でいうと、それは「テイスト」です。

 現場を熟知する人が経営を担っていくことに大きなアドバンテージがある、ということは大前提です。時代の先を読み、リーダーシップを発揮して会社を動かそうとするとき、誰よりも現場を知っているというのは大事な要素ですから。成功体験から失敗パターンまで熟知したうえで、次の手を打つこともできます。世の創業社長たちが圧倒的な経営力を発揮するのも、うなずけますよね。

 ただ、「名プレーヤーは名監督にあらず」と言われるように、現場のスーパースターというだけでは経営者にはなれません。経営者にはセンスも大事。アップル創業者のスティーブ・ジョブズ氏の「消費者に何が欲しいかを聞いて、それを与えるだけではいけない」という言葉は有名です。

 アップル製品は消費者の心をわしづかみにしました。彼の先見性やひらめきは「テイスト」とも呼ばれましたが、結局、ジョブズ氏の「テイスト」が世間を魅了し、社会を変えることになりました。

 経営者を目指す人は、現場にいるときから世界、社会の動きを見続けて下さい。自分ならどうするかを考える訓練を通して、自分のセンスを磨き続けることが大切です。それが経営者としての「テイスト」の基礎になる。私もまだまだ。自分なりのテイストが出せるよう、日々精進します。

AERA 2018年3月26日号

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竹増貞信

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竹増貞信(たけます・さだのぶ)/1969年、大阪府生まれ。大阪大学経済学部卒業後、三菱商事に入社。2014年にローソン副社長に就任。16年6月から代表取締役社長

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