取材時、シリアに残っている家族の写真を見せてくれた人もいた。中央の少年は眠っているのではなく、爆撃で亡くなり棺に横たわる様子(撮影/フォトグラファー・清水匡)
取材時、シリアに残っている家族の写真を見せてくれた人もいた。中央の少年は眠っているのではなく、爆撃で亡くなり棺に横たわる様子(撮影/フォトグラファー・清水匡)

 紛争が続くシリア。「地獄」と表現される惨状のなか、そこで生きる人々はどんな思いを抱えているのか。フォトグラファーの清水匡さんが取材した。

 シリア南部の東グータで2月18日から続くシリア政府の空爆で、女性や子どもを含む多数の住民が犠牲となっている。国連のグテーレス事務総長は現地のあまりの惨状にこう言った。

「地上の地獄だ」

 シリア政府は「国民をテロから守るための攻撃」と主張する一方、反体制派勢力であるシリア国民連合は「アサド政権による虐殺行為」と非難。双方、平行線のままだ。

 24日には、国連安保理が30日間の停戦要請を決議したものの、採択までロシアが「非現実的なアプローチは人道危機に対応する助けにはならない」として調整が長引き、米国はこれを「ロシアのせいでシリア国民の苦しみが長引くことになった」とするなど非難の応酬だ。そして国連の決議以降も依然空爆は続き、犠牲者はなおも増え続けている。

 そんな東グータを含むシリア国内の4地域に昨年5月、兵器使用の禁止、人道支援物資の調達のための「緊張緩和地帯」が設けられた。ただテロは停戦の対象外。中でも反体制派勢力の拠点でもある東グータは、シリア政府拠点の首都ダマスカスに隣接しているため、ISがシリアで事実上壊滅状態となった今、アサド政権は反体制派勢力への攻撃に注力しているのだ。

 砲撃の音がやまぬ中、子どもたちが苦しんでいる。4年前、爆撃で家が壊され、家族で難民キャンプに避難したジャミル君(取材当時14歳)を取材した際、彼は「シリアは僕の大切な故郷。僕たちの世代がシリアの未来を担っているんです。もしシリアに戻ったら祖国の将来を築きたい」と熱い想いを涙ながらに話してくれた。だが昨年キャンプを訪ねた際は一家はすでにシリアに戻っていた。そして年末に突然、ジャミル君からフェイスブックにメッセージが来た。

「シリアを出て外国に行きたい! ここには僕の将来はないんだ。外国に行ってチャンスを掴みたい。国外に出るにはどうしたらいいの?」

次のページ