音楽が大好きな少年ミゲルは厳格な「家族の掟」によって、音楽を聴くことを禁じられていた。だがある日、ひょんなことから先祖たちが暮らす“死者の国”に迷い込む。そこで心を通わせるのが、骸骨のヘクターだ。

「へクターを幽霊で表現することもできますが、『死者の日』ですから骸骨ですよね。骸骨というモチーフがあったからこそ、アニメーション向きな物語だと思ったんです。作品をつくるときは、『実写ではなくアニメーションでしかできないことを映画にしよう』と決めているので」

 映画が描いた“死者の国”は、カラフルでにぎやかな「24時間ずっとお祭りが続いているような場所」だ。

「死者の国の人々が年に一度だけ愛する人に会える日、きっとみんな盛り上がってディズニーランド状態になっているのではないかな」(アンクリッチ)

 映画を見ると、この世から旅立った家族も、顔を合わせたことのない何世代も前のご先祖さまもきっと、死後の世界では楽しく過ごしている、と素直に思えるから不思議だ。

「ご先祖さまに会えたら、面白いだろうね」

 と、アンクリッチ。外見は似ているか。自分が興味を持つものに同じように興味を抱くか。聞きたいことがたくさんある。ミゲルもそんな人たちに会えてうれしかったんじゃないか、と。

「僕自身、家族ともっと話をすることが大切だと考えるようになりました。日々忙しくて忘れがちだけど、彼らの物語が永遠に失われないように、ちゃんと耳を傾けて、ほかの人にも伝えていかないと」

(文中敬称略)(ライター・古谷ゆう子)

AERA 2018年3月19日号