いったい誰が勝者なのかさっぱり分からない。結局、政権の行方は今後の連立交渉に委ねられる。要するに再びグルーピングのやり直しとなり、そもそも選挙はなんだったのかという疑問さえ抱く。再選挙の可能性も残されており、イタリアの政治情勢は極めて不安定な状況に陥った。

 一つだけはっきりしたことがある。みずほ総合研究所欧米調査部上席主任エコノミストの吉田健一郎氏が指摘する。

「EUに懐疑的で、難民や移民に厳しい五つ星運動や同盟が得票を伸ばしたのは、イタリアでも既成政党にNOが示されたということ。もともと親EU論の国だったが、どんな連立になるにしても、多かれ少なかれ自国優先的な政権になると思う」

 同じく反EU、反難民の同盟と、M5Sが連立を組む「ポピュリスト政権」ができることを欧州各国は警戒している。ポピュリスト政党への支持が右肩上がりに伸びている欧州で、その傾向がイタリアでも示された形だが、こうした政党が今後、単独で過半数を占めるほどの勢いになることは考えにくいと、吉田氏は見ている。

「昨年から続いた欧州主要国の選挙は、イタリアで一区切りとなる。このような政党への支持はある程度、既に吸収されていて、臨界点はある。今後、支持率は高止まりするものの、急激な上昇はないと推測する」

 こうした傾向を強めないためにも、欧州主要国で次に選挙が集中する2021~22年までに、各国の既成政党が支持を回復するだけの政策を打てるかどうか。これが最も重要な注目点になりそうだ。(編集部・山本大輔)

AERA 2018年3月19日号