北の「斬首作戦」は誰も考えていない? 日本は“蚊帳の外”な朝鮮半島問題

東京外国語大学教授 伊勢崎賢治さん(60)/東... (11:30)AERA

東京外国語大学教授 伊勢崎賢治さん(60)/東... (11:30)AERA
 ミサイル発射や非難の応酬で緊迫した朝鮮半島が一転、対話へと舵を切り始めた。平昌オリンピックのほほ笑み外交が奏功し、南北は急接近。韓国特使を歓待した金正恩朝鮮労働党委員長は非核化の可能性にまで言及した。かたや頭越しに飛び交う言葉とミサイルを目で追う日本。依然として“蚊帳の外”のままだ。この接近、果たしてホンモノか。この先には何が待つのか。東京外国語大学総合国際学研究院教授伊勢崎賢治さんに話を聞いた。

【写真】晩餐会で和やかに談笑する金正恩朝鮮労働党委員長

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 現在の米国と北朝鮮の緊張度合いは、どういう視点で捉えるかによって異なる。ただ米陸軍とずっと仕事をし、安全保障の実務家の本音に触れる機会の多い私から見ると、敵政権を倒しての占領などあり得ない。

 昨年9月、ソウルであった太平洋地域陸軍参謀総長等会議(PACC)に参加しました。北朝鮮とパキスタンを除く、太平洋地区32カ国・地域の陸軍のトップだけのクローズドミーティングで、中国軍からも当然参加していました。私はアフガニスタンの紛争処理の経験を買われ、招かれました。会議では何かの引き金で米朝開戦になった場合、多国籍軍としてどう占領統治をやるのか。そのリスクとコストについて議論しましたが、「斬首作戦」のようなことは誰一人考えていませんでしたね。

本当の戦争は、敵の政権を倒した後に始まります。国家と国家が互いに釣り合うかたちで戦う「対称戦」の後に、全員が整然と武装解除などするわけがない。抵抗分子や不満分子が残り、ゲリラになり、国家との「非対称戦」に突入します。

 北朝鮮も同様に、金正恩なき後、200万人いる北朝鮮軍人が整然と武力解除に応じるわけがない。その混乱を極めた地域を国際部隊が占領統治するのは、キャパシティーを超えている。アフガニスタンに投入された部隊でもピーク時で14万人なので、それを上回る数になる。それもアフガンもイラクも全部失敗し、いまだに終わらない。この会議では、国際社会の責任としてもう一つの新しい占領をつくるということは、キャパも超えているし、できませんねという合意ができたと言えます。

 また、米国は決して一枚岩の国ではない。国務省と国防総省、空軍や海軍、陸軍では考え方も異なる。そうした中で、今回の合意は、陸軍から大統領に発した「戦争のコストとリスクを判断していただきたい」というシグナルの意味合いもある。同時に、38度線から近いソウルで我々が会議をやっているのは北朝鮮も当然知っていて、有事の際の占領統治の方法をちゃんと検討しているんだよ、というサインにもなったでしょう。

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