いずれにしても、戦争なんて誰も望まない最悪の事態です。現実的には北朝鮮の核武装はずるずる半永久的に続くとみています。だってアメリカはインドに核開発を許し、そのインドと戦争をしたパキスタンにイスラム教国として初めて核保有を許したんですから。

 そのパキスタンは、北朝鮮と繋がりが非常に深く、互いに助け合ってミサイル技術とウラン濃縮による核弾頭の質を高めてきた。圧力をかけつつ容認するのは前例がある。このダブルスタンダードがまさにアメリカの本質なのです。その中で韓国も日本もずっと翻弄されてきた。

 先ほどの朝鮮国連軍地位協定は韓国も持っています。それと日米地位協定、韓米地位協定は連動している。朝鮮戦争有事の際は日米安全保障条約とも連動していて、後方支援本部の横田基地を含めた在日米軍基地が使われることになる。これを「自動交戦装置」といい、我々日本は交戦をしない、という主権がないんです。

 これは国際比較をしても非常におかしい協定で、米軍を国内に置いているイタリアやドイツ、いま戦争をやっているトルコにだって当然この権利は保障されている。ISをやっつけるためにシリアに飛び立つ米軍機に、トルコはノーと言える。なぜなら仕返しはアメリカじゃなくトルコにくるわけだから、国防上の理由からアメリカに開戦をストップできるんです。だが日本にはこの権利はありません。「管理権」がないから首相は何も言えないし、「知る権利」もない。開戦の際に事前通知してもらえるかどうかなんて議論は、日本でしかありません。

 米軍に日本から出て行ってもらうのも、スパッと日米地位協定を廃棄するのも難しいでしょう。でも敗戦国のドイツが獲得したような自国防衛の権利を得るために、議論をすべきです。同盟ならノーと言えるはずが、日本の場合は「保護国」のような扱いです。アメリカを体内に抱えながら、不利益を被るリスクを考えない国防論なんて、国防論ではありませんよ。

(構成/編集部・大平誠)

AERA 2018年3月19日号より抜粋