小島慶子(こじま・けいこ)/タレント、エッセイスト。1972年生まれ。家族のいるオーストラリアと日本との往復の日々。近著に小説『ホライズン』(文藝春秋)。最新刊は『るるらいらい 日豪往復出稼ぎ日記』(講談社)
小島慶子(こじま・けいこ)/タレント、エッセイスト。1972年生まれ。家族のいるオーストラリアと日本との往復の日々。近著に小説『ホライズン』(文藝春秋)。最新刊は『るるらいらい 日豪往復出稼ぎ日記』(講談社)
訴訟の行方はどうなるのか (c)朝日新聞社
訴訟の行方はどうなるのか (c)朝日新聞社

 タレントでエッセイストの小島慶子さんが「AERA」で連載する「幸複のススメ!」をお届けします。多くの原稿を抱え、夫と息子たちが住むオーストラリアと、仕事のある日本とを往復する小島さん。日々の暮らしの中から生まれる思いを綴ります。

【写真】提訴後に記者会見する青野慶久さん

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 映画「千と千尋の神隠し」では、名前を奪われると自分が何者かを忘れてしまう世界が描かれていました。名前は霊的な力のあるものだから大切にしようという感覚は、昔からありますよね。

 名字だって同じように、自分自身の根幹をなすものだと考える人はいます。

 私の友人は、夫婦ともに婚姻によって民法上の氏を変えたくなかったため、法律婚ではなく、事実婚を選択しました。子どもが生まれた時の手続きが煩雑だったそうです。

 一方で、民法上の氏が変わっても構わないという人もいます。

 私はこちらでした。仕事では旧姓使用できるのだし、と。ただ、公式書類で旧姓使用が認められないために煩わしい思いをすることはしょっちゅうです。

 今年サイボウズの青野慶久さんらが国を相手取って起こした訴訟では、戸籍上旧姓も使えるようにするべきだとも訴えています。公式書類での旧姓使用を望む人には心強いですね。

 ただ、それでは婚姻によって民法上、夫婦が同じ氏になることに変わりはありません。私の友人のようにそれぞれの氏のままで婚姻届を出したいカップルにとっては、問題は解決しないのです。

 そこで今月、事実婚の男女4組が、夫婦それぞれの氏の使用を望むカップルに法律婚が認められないのは、憲法が保障する「法の下の平等」に反するという集団訴訟を起こすことになりました。「同じ名字でいい」というカップルと「それぞれの名字がいい」というカップルの間の不平等をなくすべきだ、ということですね。

 昨年の内閣府の世論調査では選択的夫婦別姓に賛成した人は43%、反対29%。「同じ名字でないと家族が壊れる」というこじつけめいた反対を唱える人もいる中で、選択的夫婦別姓制度の春は訪れるのでしょうか。

AERA 2018年3月12日号

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小島慶子

小島慶子

小島慶子(こじま・けいこ)/エッセイスト。1972年生まれ。東京大学大学院情報学環客員研究員。近著に『幸せな結婚』(新潮社)。共著『足をどかしてくれませんか。』が発売中

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