「十七条憲法の第1条は『和をもって貴しとなす』。サステナブル(持続可能)な成長には一枚岩の強い組織であることが不可欠」

 日本郵政の長門正貢社長は唯一外国人を挙げた。米16代大統領(在任1861〜65年)のリンカーン。南北戦争に勝ち、演説で「人民の、人民による、人民のための政治」と語ったことで有名だ。長門社長は「国家分裂の危機を乗り越えた」「民主主義を確立」「奴隷解放=ダイバーシティー」と理由を答えた。遠い異国の存在ではなく、きわめて今日的な課題に挑んだ偉人と受け取っているようだ。

 主に実業の功績で知られる人物が広岡浅子しかいないのも意外だ。NHKの連続テレビ小説「あさが来た」で有名になったが、大同生命の創業者の一人でもある。親会社T&Dの喜田社長が挙げたのも、ここに親近感を抱いたのかもしれない。

設問(4)で「もっとも好きな人物」の時期を幕末・明治初期に限定すると、坂本龍馬が6人でトップ。うち3人が設問(3)のもっとも好きな「歴史関連の書物」で『竜馬がゆく』だと答えた。その一人、旅工房(東証マザーズ上場)の高山泰仁会長兼社長は、「(同書は)時代の大きな移り変わりを龍馬の視点で書き、龍馬がどうとらえているのか、思いをはせられるため」と答える。もう一人、三菱ケミカルHDの越智仁社長は経営者特有の視点を加える。「周囲を巻き込んで行動を起こしていくことは現代の会社経営にも通じる部分がある」

 幕末・明治初期の次点は大久保利通で2人。やはり行政手腕が買われた。日本郵政の長門社長は、「国家存亡の危機をキチンと乗り越え、新国家を建設し得た。大きな信念、緻密(ちみつ)な実行力、着実な経営力」。リンカーンと重ねて見ていそうだ。何かと対比される西郷隆盛を挙げたのはANAの片野坂社長。「郷土の星」と答えたことからわかるように、鹿児島県の出身だ。

 設問(2)のもっとも関心がある「歴史上の出来事」では、明治維新(大政奉還を含む=複数回答あり)の7人に、第2次世界大戦(1945年の終戦、ガダルカナル作戦を含む=同)の4人が続く。双方を挙げた大和ハウスの樋口会長は、「どちらも大きな政治・社会体制の変革であり、現代の日本へ続く大きな転換点になった」とする。変革、転換点。いま再びその時期を迎えていると考えれば、これらの出来事を学ぶ必要性は高まる。

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