「習った構文を応用し、英語で対話のキャッチボールができるようになってきました。恥ずかしいという気持ちもなくなり、積極性が出てきたと思います」(田中教諭)

 小学校から大学まで、広く導入されているのが、英語学習アプリの「EnglishCentral」だ。同アプリは、音声認識技術を英語学習に応用して作られた。一般向けには、レベル1から7まで1万4千本以上のコンテンツが搭載されており、映画や音楽、旅行など興味のある分野を選んで学習することができる。

 最大の特徴は、パソコンやスマホに向かって英文を読み上げれば、発音が自動的に分析され、フレーズ、単語、発音記号ごとにチェックできる点だ。さらに音声を構成する単位の音素レベルでのチェックも可能。正確な発音は緑で、不正確だと赤で表示される。

 この音声認識技術に着目して、導入を決めたのが鎌倉女子大学中等部(神奈川県鎌倉市)だ。ヘッドホンを耳に、パソコン画面をにらみながら、発音の練習に余念がないのは2年2組の生徒たち。石井奏凪(かんな)さんは言う。

「今まで、きちんと発音できているかどうかわかりませんでしたが、弱点がわかるようになりました。得点が出るので練習のテンションが上がります」

 コンテンツの中身は同校が使う教科書に沿っており、授業と連携させながら学習できる。練習した内容は記録されるため、どの音が苦手なのか生徒のデータを蓄積し、半年前に比べてどの程度上達したか把握するなど、指導に反映させることもできる。英語科の野田明教諭は言う。

「日本の英語教育は、発音が評価される機会は多くありません。日本人はネイティブライクに話すことを恥ずかしがる傾向があり、それが英語を話すうえで心理的な壁になっている」

 生徒も最初は小さな声で話していたが、発音が評価されたことが自信につながった。堂々と話せるようになり、さらに海外研修でも、積極的に話しかけるようになった。野田教諭は、AIやITが得意な分野は任せ、それ以外の教員がやるべき教育を充実させていきたいと話す。

「伸び悩んでいる生徒を励まし、世界へ目を向けさせて英語を学びたいという動機を与えるなど、生徒の心に寄り添った指導をしていきたい」

(ジャーナリスト・柿崎明子)

AERA 2018年3月5日号より抜粋