――確かに、セクハラや性暴力に対して「自衛」を求める声が警察や行政、そして一般社会からも絶えません

 同意は当事者同士の話だけれど、そこから一歩進んで、性暴力を見かけたり、友人に相談されたりしたらどうすればいいかを考える「第三者介入」についてもハンドブックには盛り込むつもりです。飲み会でセクハラしている人を見かけたら「それはないよ」と注意したり、何げなく話題を変えたりするだけでも効果があります。友人に被害を相談された場合に「なんで抵抗しなかったの?」「なんでそんな服を着てたの?」「なんで家について行ったの?」などと言うのはセカンドレイプにあたります。これらは同意とは関係ないですから。当事者間だけでなく、性暴力を容認しないコミュニティーをつくることで、社会の意識を変えたいんです。

――ハンドブックをつくるきっかけは何だったんですか

 昨年、性犯罪についての刑法の規定を変える「Believe~わたしは知ってる~」キャンペーンをちゃぶ台返し女子アクション含む4団体で行い、ワークショップや署名集めなどをやりました。刑法は明治時代以来となる改正が加えられて前進したんですが、私たちが問題視していた「暴行脅迫要件」は撤廃されませんでした。身体に傷がついたり服が破れたり、激しく抵抗した証しがなければ強制性交等罪と認められにくいんです。イギリスなど他国では同意に基づかない行為=犯罪だと規定されているところが多いのに。社会全体で同意が軽視されていることを痛感しました。

 東京大学や千葉大学などで性暴力事件が立て続けに起こったのも大きいです。6年ほど前からキャンパスレイプが社会問題になったアメリカやイギリスでは、大学が新入生向けにセクシュアル・コンセントのオリエンテーションを開催し、校内にも啓発パンフレットを貼るようになりました。性暴力サバイバーたちが声を上げたのをきっかけに、学生や市民団体が立ち上がった結果です。私もそれを知って日本でも同様のムーブメントが起こせればと、大学生向けの性的同意を考えるワークショップを始めました。来てくれた学生さんたちは好意的な反応が多いですが、それはもともと意識が高い人しか参加していないから。もっとハードルが低く、普及効果のある方法を考えたときにハンドブックがいいんじゃないかと思ったんです。

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