ズッキーニが初めてカミーユを見たときの顔が、「アイデン&ティティ」という映画で、僕が初めて麻生さんを見たときと同じ表情なんですよ(笑)。あちこちで言っているんですが、僕、麻生さんを人として本当に好きなんです。監督にも直接、「麻生久美子という役者は、僕にとって天使で、おかげで僕はズッキーニになれます」と言ったら、「ナイスキャスティングだ」と笑ってました。

 僕は40歳で大人ですけど、どこかに子どもっぽいところが残っている。この作品は、誰の中にも残っている子どもの部分を外からちゃんと見て、残酷さや可愛さ、現実もファンタジーも含めて丁寧に作っている。

 作品でびっくりしたのは効果音です。風が吹く音、リスが何かをかじる音、それからハエが飛んでいる音まで入っているんですよ! 大人は気づかなくなっている音も、子どもには聞こえている。そうした音を入れることで、子どもの感受性に寄せているんじゃないでしょうか。

(ライター・矢内裕子)

AERA 2018年2月26日号