和田孝雄(わだ・たかお)/1991年、テンプスタッフ(当時)に入る。副社長などを経て2016年から現職。親会社パーソルホールディングス(現在)の専務も兼ねる。55歳(写真:パーソルホールディングス提供)
和田孝雄(わだ・たかお)/1991年、テンプスタッフ(当時)に入る。副社長などを経て2016年から現職。親会社パーソルホールディングス(現在)の専務も兼ねる。55歳(写真:パーソルホールディングス提供)

 派遣社員をめぐる環境が変容しているという。「望めばスキルアップのチャンスもある」と、パーソルテンプスタッフの和田孝雄社長が語る。

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 人件費が安いから正社員を派遣社員に置き換える。この「常識」は、もはや時代遅れになりつつあります。とくに単純な定型業務であれば、ロボットの活用も視野に入る時代ですから。いま派遣会社には費用に加えて成果も求められます。

 顧客企業が新規事業に進出する。新商品を発売する。これらの重要度が高いほど、優秀な正社員をより多く投入したい。既存事業から異動させます。

 この既存事業を、わたしたち派遣会社が丸ごと引き受ける案件も増えてきました。業務の外部委託に派遣社員を使う枠組みです。派遣は業務委託と違って派遣先の企業が指揮命令権を持つので、成果がきちんと上がっているか、発注側の企業が細かく確認できる利点があります。

 派遣会社にしてみると、欠員を埋めるだけではなく、生産性の向上も注文に含まれます。第三者の目で業務運営の問題点を見つけ、改善していく仕事です。

 役割が多岐にわたるので、チームとして派遣します。プロジェクト全体を統括する、業務の流れを再構築して効率化する、日々の事務処理をする……。それぞれの技能を持つ人で構成されるチームです。メンバーも固定されているわけではなく、たとえば業務の再構築が終われば、担当者は別の案件に移ります。

 派遣社員にとっては、派遣先の正社員と同じ業務を経験することでスキルアップにつながります。余人をもって代えがたくなり、派遣先で正社員に登用された人もいます。2015年の派遣法改正でも、派遣会社は派遣社員のキャリアアップをお手伝いする義務が課せられました。成長を望めば実現できる環境が整いつつあるのです。

AERA 2018年2月26日号