とはいえ課題も残る。ひとつは2018年問題の5年ルールに適用を免れる「抜け道」が存在すること。契約終了から再契約まで6カ月以上空くと、その前の契約期間を通算に含めなくてもいい。これを活用しようとしたのか、一部の自動車会社では社内の仕組みを変え、契約と契約の間を6カ月に延ばした。

 二つ目は同一労働同一賃金に企業の抵抗感が強いこと。雇用形態が違っても同じ業務をするなら賃金を同じにする。だが、

「習熟度が違っても差をつけられないのか」

「同業他社と同じ賃金にしなければいけないのか」

「正社員だけが異動や転勤などを背負っている。これは無視していいのか」

 企業から批判の声が相次ぎ、所管する厚生労働省幹部も、

「企業はさめた目でみている」

 と、腰が引ける。導入時期を1年遅らせる方向だ。

 三つ目が「雇い止め」。本当の理由を隠すなどして契約社員や派遣社員の契約を打ち切ることだ。08年のリーマン・ショック後に相次ぎ、社会問題化した。「いまだに非正社員を人件費削減の道具としか考えていない」(同)企業には、2018年問題に過剰に反応して強引とも思える動きが見えつつあるという。

 前出の島貫教授に、ある企業の人事担当者が「強い会社というよりも、いい会社になりたい」と語ったそうだ。これから企業の評価は商品やサービスに加えて、働き手の遇し方も重要な物差しになっていくはずだ。(編集部・江畠俊彦)

AERA 2018年2月26日号