署名運動は、平和でよりよい世界の構築に寄与するとしたオリンピック憲章の理解を広め、世界中から戦争、紛争、非人道的行為をなくすために最大限の努力を呼びかけるものだが、波多野さんの思いはそこにとどまらない。

「大会自体がオリンピックという名の政治になっている側面があるので、常に批判していかないといけない。商業主義も含めてだ。五輪のあるべき姿とはなんなのか、オリンピック憲章に立ち返るべきだ。特に政治的な圧力には対抗するべきだし、そうしないといけないと憲章には明確に書いてある。政治的な圧力を排したスポーツが行われて初めて、教育的な意味合いとか平和的な側面が強調できる」

 もともとはアマチュアの大会だった五輪がプロ化し、種目や参加選手も増えて、運営費用もふくれあがった。政治を完全に排除するのが極めて困難なメガ大会となった五輪。いつしか薄れていった選手ファーストを取り戻し、本当の意味での平和に貢献する五輪に変わるにはどうするべきなのか。大会が東京に戻ってくる20年に向け、五輪のあり方が強く問われている。(編集部・山本大輔)

AERA 2018年2月26日号