「制度の問題で、年度末の3月には公募案件が終了となり、受託者は自治体に報告書を提出しなければならない。その結果、次年度はまた一から異なる受託者がプロジェクトをやり直すということは多々あり、無駄が生じてしまう。インバウンドに限らないが、地方創生はいかにして年度の切れ目をなくして継続してつづけるかが課題となる」

 経済学者で『これからの地域再生』(晶文社)の編著もある、明治大学の飯田泰之准教授は、地方創生失敗の最大の要因は「補助金依存型の巨大開発」にあると指摘する。

「巨大開発は補助金の申請から、大手建築会社への発注、下請けへの割り振りなど詳細な計画が必要で、いったんスタートしたら途中で引き返すことは難しい」

 まさに青森市が約185億円を投じたJR青森駅前の複合商業施設アウガがそうだった。

 逆に、地方創生で成功しているのは、小さく始めて大きく育てるケースだという。一度決めた方針で最後まで突き進むのではなく、計画策定時には予想できない事態が起こるものとして、節目ごとに次の段階に進むかを判断する。失敗だとわかれば、方向転換も可能──。金融工学の理論を用いた「リアルオプション」という事業評価方法だ。

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