「最初に半年働いた店では、取材メモだけでA4の紙300枚くらいになりました。それを全部、時系列にプリントアウトして編集するだけでも相当なものです」

 その潜入記事が掲載された「週刊文春」発売の2日後、横田さんは解雇通知をされる。「懲戒解雇」より弱く、根拠のあいまいな「諭旨退職」(説得して辞めてもらう)だった。

「退職後に書いたルポはありますが、働きながらの潜入ルポは例がないと思います。私がそこにこだわったのは、書いたことが明らかになった時、『懲戒解雇できるんですか?』と問い質したかったからです。実際、彼らは懲戒解雇にはできませんでした」

 横田さんはファーストリテイリングの株主にまでなり、株主総会で質問も試みている。しかしそこでも柳井氏から直接回答の言葉を聞けたことは、今日までほとんどない。
「ユニクロは誰一人社長に意見できない超ワンマン会社だと思います。柳井さんが変わらない限り、会社も変わらないでしょう。私はこれからも、私が書いたことへの柳井さんの反論を待ち、対話が始まることを願って情報収集を続けていきます」

(ライター・北條一浩)

AERA 2018年2月19日号