地方の活性化と人口減対策のための総合戦略の策定を進めてきた政府。「まち・ひと・しごと創生本部」では“事例集”などもまとめているが、いまだ成果があがっているのはごく一部 (c)朝日新聞社
地方の活性化と人口減対策のための総合戦略の策定を進めてきた政府。「まち・ひと・しごと創生本部」では“事例集”などもまとめているが、いまだ成果があがっているのはごく一部 (c)朝日新聞社

 地方創生と言ったって何をしていいか分からない。自治体が頼るのがコンサルタントだ。だが、名ばかりの専門家も跋扈している。地方創生に携わるコンサルタントによる匿名座談会でその実態が明かされる。

●座談会参加者

 観光コンサルタントAさん(30代)=全国の地方自治体の観光推進を手伝うコンサルタント。元バックパッカーで世界中を旅して回った経験も。

 ブランディングコンサルタントBさん(30代)=地方企業のブランディング事業を展開。その実績から、九州や関東近県の商工会議所などからセミナー、コンサル依頼が入る。

 人材コンサルタントCさん(30代)=クラウドソーシング事業に携わった後、人材サービス会社に。現在、自治体や地方企業に地元出身の専門家を紹介している。

*  *  *

──2015年度から全国各地で地方創生交付金を活用した地域活性化事業が本格化し、毎年1千億円規模の予算がつけられています。今や、“地方創生バブル”などとも言われていますが、現状はいかがでしょう?

A:私はいくつかの自治体の観光振興事業も手伝わせてもらっているコンサルタントですが、確かにお仕事は増えてます。比較的簡単に予算がついてしまうので、自治体の公募案件は無数にあります。ただ、バブルと言われるほどうまみはありません。本来、地域活性化は何年もかけてようやく結果が出てくるもの。政府は5カ年計画を謳っていますが、お役所は基本的に単年度主義ですから継続性がなく、1年で終わってしまう仕事が少なくありません。そうなると、こちらとしては人を増やしにくく、仕事に合わせてその道のエキスパートを集めてコンソーシアムを組むことになりますが、仕事がありすぎて人の取り合いにもなっているんです。

B:だから、まったく専門性のないコンサルタントまでもが跋扈してるんですよね……。私は県や市、商工会議所などが用意している専門家派遣制度に登録して、地元企業のブランディングに携わっているのですが、「専門家」とは名ばかりの人が少なくありません。皆さんご存じかもしれませんが、中小企業庁は「ミラサポ」という中小企業や小規模事業者向けの専門家派遣サービスを提供しています。専門家には1時間5千円の謝金が支払われますが、これは全部助成金で賄われるので中小企業は負担ゼロ。県や市の派遣サービスですと、1時間1万5千円の謝金が発生するところもあります。何が言いたいかというと、この謝金だけで生計を立てているコンサルタントが大勢いるんです。私も多いときは1日に3件の依頼を受けることがあります。すると謝金だけで1日4万5千円。当社は20人弱の従業員を抱えているので無理ですが、1人でやっているコンサルタントや中小企業診断士などはこれだけでも食っていけてしまう。

C:私は以前、オンライン上で地方の人に仕事を発注できるクラウドソーシング事業に携わり、今は地方の自治体や企業向けに専門家の紹介サービスを行っています。もちろん、名ばかりの専門家ではありません(笑)。自治体がPR用の人材を欲していれば東京の企業のPR担当者を、事業プランを組み立てられる人を欲していれば経営企画の人を紹介しています。それも、「副業」できる“地元出身者”を紹介しているんです。いくら地方の自治体や企業が人材不足に陥っていても、年間何百万円もの人件費を支払って専門家を雇用するのは財政的に難しい。だから、「地元に貢献したい」という地方出身者で、かつ東京でバリバリ働かれている方を探し出して地元に紹介するサービスを立ち上げているんです。月1回の“出勤”で対応可能な副業であれば、支払う報酬は数万円で済みます。月1回の帰郷にかかる交通費だけ出ればいいという人も少なくないんです。

(構成/ジャーナリスト・田茂井治)

AERA 2018年2月19日号より抜粋