子どもが映画を習ったら 育ったのは「自己肯定感」だった

古谷ゆう子AERA

子どもが映画を習ったら 育ったのは「自己肯定感」だった

こども映画教室/諏訪敦彦監督を講師に9人の中学生たちがつくった短編が、6月、仏パリのシネマテーク・フランセーズで、他の14カ国の子どもたちの作品とともに上映される(撮影/倉田貴志)
 映画館という場所は実は、子どもたちにとってハードルが高い。暗いし長いし黙っていなきゃいけないし。しかしいま、映画と子どもを近づけようという試みが数多く生まれている。なぜなのか。

【諏訪監督の公開中映画「ライオンは今夜死ぬ」のワンシーンはこちら】

 冬休みが始まったばかりの12月のある日。9人の中学生たちがカメラを片手に、横浜の海沿いを歩き始めた。みんな、「こども映画教室」の参加者。週末を使いながら、3月末までに14日間に及ぶ映画制作ワークショップに臨む。

 映画「不完全なふたり」「ユキとニナ」で知られる諏訪敦彦(のぶひろ)監督が講師を務める。この日のお題は「自分以外の人間にとって『大切な場所』を映す」。人物を登場させずに、観る者が「誰かにとって“思い入れがある”ことが感じられる映像」を2分以内で撮らなければならない。

「漠然とではなく、何が大切なのか、よく考えて表現して」

 諏訪監督はそれだけを口にし、一緒に歩き始めた。なかには、途方に暮れる子も。それでも、歩き出すことで見えてくるものがある。船の汽笛、撤去作業中のクリスマスマーケット……。目に映り、耳に飛び込むものすべてが子どもたちを刺激し、足取りも軽やかになっていく。

 なんとか全員が撮り終え、翌日はスタッフの力を借りて編集、そして上映。

「カメラの動きやスピードで、気持ちや感情は何となくは伝わるよね」

 諏訪監督の言葉に聞き入る。

 子どもを持つ親にとって、実は「映画」はハードルが高い。映画が人生を豊かにしてくれるであろうことはわかる。でも、いざ観ようとすると「字幕は読めるか」「2時間集中できるか」といった不安がつきまとい、尻込みしてしまう。まして、映画を「つくる」なんて。そんな心配をよそに、子どもたちがこれほどに熱中できるのはなぜか。

 2004年にスタートしたこども映画教室は、おもに小学生を対象にした映画の鑑賞と制作、両方のワークショップを行う。代表の土肥悦子さんによると基本方針は二つ。一つ目は、大人は手出し口出しをしない、だ。

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