「カメラがメスの直前まで入るので、より正確な手術が可能になります。しかも僕が見るのと全く同じ映像を他の人も見られるので、開腹手術のときと比べ若い医師が断然育ちやすくなりました。たくさんの手術例を見られますから経験値を上げることができる。ですから当院での研修を希望する若い医師が毎年大勢いらっしゃいます」

 手術の9割は「剥がす」作業だという。腸の周囲にある剥離(はくり)層を「バウムクーヘンの年輪を一枚ずつ剥がすように」切除していく。

「がんのある腸の前後と、そこに向かう血管と、周囲のリンパ節をまとめて取るためには、層をきれいに剥がす必要があります。このとき“取るべきもの”ではないところにメスが入れば大きく出血してしまうし、浅く入れば取り残しができてしまう。そこを正確に見極めると、結果的に早く、かつ過不足のない手術になります」

 手術例の蓄積により、リンパ節への転移についても的確な切除が行えるようになった。

「がんの位置によって、どこのリンパ節にどの程度の確率で転移があるかということが過去の手術例でわかっています。大腸や胃のがんなら、そこさえちゃんと取ればよく治ります」

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