「4期のがんと言われれば、多くの患者は軽いパニックに陥り、頭や骨に転移があっても『なんとか手術を』という気持ちになりがちです。医師の選択は驚きかもしれませんね」

 そのうえで、こう指摘する。

「皆さん一般論を求めますが、がん治療は患者によって違う各論の世界。体力や年齢、社会背景、治療効果とリスクを考えることが必要です。どのステージでも、自分にとって意味ある治療を選ぶべきです」(鈴木医師)

 体力と治療効果とリスクの観点から医師は患者に助言するが、患者の状態と希望により、最良の治療は異なるという。東邦大学医療センター緩和ケアセンター長の大津秀一医師は言う。

「緩和ケア=末期の治療という印象が強いかもしれませんが、緩和ケアとは痛みや不安など患者の苦痛を和らげるもので、いまはがんと診断された時点から治療と並行して始めるもの。何期でも受けられます」

 2010年、非小細胞肺がんで、抗がん剤治療単独より、緩和ケア併用のほうが予後がよい、という研究結果が発表された。

「緩和ケアを受ける患者は病状や先のことをよく話し合う傾向があります。体が弱っているのに無理に抗がん剤を使うケースが少なかったから、予後などにいい影響を及ぼしたのではと言われています」(大津医師)

(編集部・澤志保)

AERA 2018年2月12日号より抜粋