実際、旅を続けるうちに少しずつ、由加利の「角」が取れていく。終盤で自身の思いに気づき涙を流す姿に、カタルシスを覚える観客は少なくないだろう。

 本作は長澤にとって、20代最後の年に撮影した作品。12歳で芸能界入りし、俳優として順調に歩んできた彼女の中に、この映画は何を残したのか。

「今回は、監督と一緒に作品を作り上げたという感覚が特に強かったんです。中江監督にとってこの映画は長編デビュー作。年齢は私より上ですし、経験値も演出テクニックもある方ですが、映画監督としては若手に入る。そんな、これから勝負して舞台に上がっていく方と一緒に時間を過ごせたことは、自分にとっても成長する瞬間だったと思うし、また一段、上のステージに上がれるような感覚がありました」

 今後、さらに目指すことは?

「ありがたいことに、監督に『新たな長澤まさみを見せたい』と思っていただくことが多いんです。これからも、『どうにかしてこいつから新しい魅力を引き出したい』と思われる俳優でありたいですね」

(フリーランス記者・坂口さゆり)

AERA 2018年2月5日号